経済学史学会 第5回若手研究者育成プログラム
10/2-3に,晴海グランドホテルにて,経済学史学会の第5回若手研究者育成プログラムに参加してきました。
昨年度は経済学史や経済学入門の授業のコツなどを中心に行われ非常に助かりましたが,本年度は若手研究者の研究ネットワークを形成するという目的の下,(1)松山大学の松井名津先生によるレクチャー「科研費による共同研究の促進」,(2)大月短期大学の伊藤誠一郎先生によるレクチャー「manuscriptを用いた研究スタイル」という2つのレクチャーと,(3)ワークショップ「共同プロジェクトの構想・発表」が行われました。
(1)については,松井先生が科研費をとる上でのポイントやとった後の苦労など具体的にレクチャーしてもらいました。個人的には,コメンテーターの古谷豊先生(東北大学)をはじめとする様々な先生の科研費に対する考え方が聞けてよかったです。(2)のレクチャーはmanuscriptを使った研究のコツ以前に,どのような研究あるいは研究者になりたいのか(理論史家?Historian?)など,研究をしていく上での覚悟を問うものだったと思います。
(3)のワークショップですが,これは参加メンバーをシャッフルしたうえでどのような共同プロジェクトを構想するかということでした。私が入ったのは,ロバート・ウォーレスを研究されている中野さんとスミス以降の貧困問題と19世紀前半の政治経済学を研究されている新井さん,そしてJ.S.ミルの社会経済思想を研究されている松井名津先生のグループでした。私の研究テーマが20世紀の企業家論ということだったので,私だけなかなかフィットしない感じでしたが,松井先生がうまくコーディネートしてくれて,「『企業家』とは何であり,何であったのか–経済学者と時代の格闘–」という共同研究プロジェクトを構想することができました。17世紀以降の「企業家」に対する経済学者の評価の変遷を見ていきながら,その時々の時代背景や経済学の課題をあぶり出すということを目的とした共同研究です。
共同プロジェクトは全部で5チームあって,他には「利己心の系譜学」「自由・宗教・貧困–『狂信』への対抗原理を求めて–」「経済思想における消費のヴィジョン」「危機の経済思想と生活–『人間の底力』を学ぶ–」という共同研究を構想されていました。一位のチームはエクスカーションで行く築地の寿司がただになるというご褒美付きでした。ちなみに,我々のチームは4位でした。私のプレゼンの仕方が悪かったかもしれません。中野さん,新井さんごめんなさい。
共同研究プロジェクトの構想は思いの外勉強になりました。いつもは分野の異なる研究者といかにして共同研究を構想していくかという作業は,自分の研究の強いところと弱いところを照らし出してくれたからです。また,他の方々との会話を通じて様々な情報も手に入りました。企画された若田部昌澄先生(早稲田大学),小峰敦先生(龍谷大学),江頭先生(小樽商科大学),久保先生(嘉悦大学)に感謝したいと思います。
経済社会学会参加
9/18-19に日本大学商学部にて経済社会学会 第46会全国大会が開催されました。
その中で,宮?義久(北海道大学 博士後期課程)さんの「大恐慌期米国のスクリップ再考:地域通貨の経済社会的な機能を問う」という報告を聞きました。内容としては,「現代の地域通貨にとってベースラインとなる大恐慌期のスクリップ」を再考することで,「地域通貨の本質を理解し,現代の地域通貨の実践的な取り組みの成果を問い直す」ことを目的とした報告でした。
私が興味を持ったのは,スクリップという「銀行券や政府紙幣とは異なる多種多様な債務証書」には,フィッシャーのスタンプ・スクリップだけではなく,将来支払われるであろ税収を見込んで発行される税収見込み証書など複数の形態があったという指摘です。多様な形態で発行されたスクリップの背後についてはあまり詳細に報告されていませんでしたが,現在の地域通貨の多様性と併せて考えてみるとおもしろいかもしれません。
またこれは感想ですが,不況期において地域通貨の形態の進化や活用の活性化がもたらされるという歴史的傾向は,地域通貨がシステム・イノベーションの一種だと考えれば,シュンペーターが観察したイノベーションと景気循環との関係性を思わせます。地域通貨の発行主体はこのようなイノベーションの担い手という意味で企業家だと言えるかもしれません。だとすれば,労働貨幣・自由貨幣・スクリップなどといった地域通貨の歴史的変遷・多様化という歴史は,地域通貨という発明の実用化を担う多くの企業家による試行錯誤の過程を示すものと言えるでしょう。
宮?さんの報告後,コメンテーターの中里裕美(明治大学)さん(切れ味鋭いコメントでした)や,平本毅(京都大学学術情報メディアセンター技術補佐員等)さん,そして栗田健一(北海道大学 専門研究員)さんなど,地域通貨の専門家の方々と意見交換をすることができました。長岡市川口地区で行っているプロジェクトなどについても貴重なアドバイスをもらいました。非常に参考になりました。
新潟県立看護大学「ふれあい実習」事前学習会
9/14に,新潟県立看護大学にて,「ふれあい実習」の事前学習会のフォーラムに座長として参加させていただきました(今回,写真取り忘れたので文章だけです)。
「ふれあい実習」とは,「上越地域で暮らす人々の生活の場に入って人々交流しながら,地域文化や価値眼が看護に及ぼす影響について学び,考える」ということを目的に,事前学習,農山村部での宿泊を伴う現地実習,そして事後学習と成果発表をおこなう一年生向けの実習だそうです。私は,この実習に携わっている看護大学の徐淑子先生のコーディネートの下,事前学習会に参加することになりました。
実際に私が参加したのは事前学習会のパート3の「ふれあい実習」フォーラムでした。そこでは,はじめに上越市東部の大潟区,安塚区,浦川原区という三区住民有志による演劇集団である「素人芝居大安浦」で制作した「義母とともに」をDVD上映し,脚本・演出担当理事の渡邊浩一氏,団員の石塚総子氏,そして上越市観光振興課職員の丸田健一郎氏という三名の方に紹介・解説をしてもらいました。その後,民俗学者の真野俊和氏と真野純子氏の両名が加わって,さらにお話を伺いました。私は看護大学の飯吉令枝氏と共に座長として参加させていただきました。
渡邊さんの「芝居づくりは地域づくり」という信念は非常に興味深く,「義母とともに」も高齢者介護や地域社会の抱える問題などを浮き彫りにするものでした。学生たちにとっても,何らかの発見があればよかったかと思います。コーディネートしていただいた徐先生お疲れさまでした。
本学大学院受験希望者へ
本学大学院受験希望者に向けた案内を掲載しました。
特に,本学大学院で経済学を中心に勉強したい方は読んでおいてください。
川口地区拡大ワークショップ
8/22に長岡市川口地区の川口公民館にて,「あっちぇーどもお茶かのみこいてぇー会(お茶会)」と称して,川口地区の拡大ワークショップが行われました。今回の主催は,前回のワークショップの主催である(財)山の暮らし再生機構川口サテライトや(財)中越防災安全推進機構に加えて,7月に行ったワークショップの参加者が中心となってつくられた「川口のことをちょっとまじめに考えている会(仮称)」の方々も入っています。
お茶会は14時から16時の昼の部と19時から21時までの夜の部の二回に分けて行われ,総勢で70名ほどの方の参加がありました。
各グループで,川口地区の良いところ,イマイチなところを挙げ,いまいちなところを何とかするためにはどうするか,楽しみながらも真剣に議論していました。
中でも印象的だったのは,個々の集落のつながりは強いのに川口全体ではつながりが弱いとの意見でした。集落間だけではなく,農業と商業と公的サービスとの連携の必要性を参加者が強く意識しているようでした。
それからもう一つ。世代間のつながりの必要性も訴えているグループが多かったです。川口を良くしたい思いは共通しているものの,若者世代からは,自分たちがやっていることを親の世代が理解してくれず,否定的なことを言われるという意見が割とありました。ただ,それに対しては,「若者世代がやっていることは理解できなくても文句を付けないし,付けるべきではない」との親の世代からの熱い応援もありました。
川口を良くしたいとの思いがだんだん形となって現れてきそうな雰囲気です。今後もまたこの活動に関わっていきます。