3/29に北海道北見市の北見芸術文化ホールにて,地域通貨フォーラムが開催されました(主催:CTC北見中央まちづくり会).
はじめに,北海道大学経済学研究科西部忠教授から今回の大震災からの教訓として,他律集中型社会から自律分散型社会への移行が必要であること,そして地域通貨もその一環であるとの提案を受け,1時間ほど参加者とのディスカッションを行いました.
その後,約30名ほどの参加者で地域通貨ゲームを行いました.
今回は,北見市の特徴を反映させるべく,北海道大学経済学研究科博士課程の宮?義久さんに協力していただき,以下の15主体を設定しました.
1.会社員,2.主婦・主夫,3.農家A(米・麦),4.農家B(野菜・薄荷草),5.地ビール工場,6.薄荷工場,7.製麺工場,8.商店,9.塩焼きそば屋台,10.お弁当屋,11.医者,12.温泉,13.旅行代理店,14.地域通貨事務局,15.銀行
これらは,労働力提供(1,2,3,4),農産物生産者(3,4),生産者(5,6,7),商業(8,9,10),サービス業(11,12,13)というミニ北見市の産業連関を想定しています(必ずしも現実の北見市を反映しているわけではありませんが).
ゲームの進行は,川口地区と同様です.今回は,最初の3ターンは国民通貨のみで取引を行ってもらい,残りの2ターンで地域通貨も導入し取引をしてもらいました.
ただし,若干の変更を加えています.前回川口地区で行ったバージョンでは,(1)国民通貨のみ,(2)地域通貨を導入し,各主体が直接生産物を販売できるように流通経路を変更,という二段階でおこないました.結果,地域通貨を導入する効果と農産物や加工品などが商店を通さず直接販売できる効果とが相まって,地域通貨を導入することによって大きな変化が現れました.今回北見市で行うに当たって,地域通貨を導入する効果と,直販効果がどのような形で現れるのかということを考える上で,(1)国民通貨のみ,(2)地域通貨を導入するが,流通経路は変更しない,(3)国民通貨と地域通貨併用でき,各主体が直接生産物を販売できるように流通経路を変更,という三段階で行うことにしました(ただし,実際には準備の都合で三段階の内の最初の二段階まででゲームは行いました).これによって,川口地区で行ったバージョンに比べてより地域通貨の効果に焦点を当ててゲームの変化を見ることができるだろうと予想したわけです.
さて,ゲームの最終結果は以下のようになりました.
これを見てわかるように今回,会社員が最終的に赤字になっています.その理由はゲームの設定の仕方にあります.今回,主体1から4までには毎ターン15000円の取引をするように設定しました.会社員は毎ターン8時間の労働力を販売しています.時給は1000円で設定していますから,8000円の収入があります.それで7000円の支出をすれば問題ないわけですが,実際には会社員の労働力がなぜか8時間すべて売れなかったわけです.実は,ミニ北見市全体での労働力市場は4時間分超過供給となるような設定をしていました.第2ターン目に会社員の労働力が4時間しか売れず,15000円の取引を行うために銀行から借金をしました.銀行へは次のターンまでに10パーセントの利息を付けて返済(返せなければ借り換え返済)しなければならず結構大変だったと思います.なぜ,会社員のところだけがうまく売れなかったのかについては,私が見たところ,主婦・主夫,農家A,農家Bに比べて控えめな行動をしていたからではと思います(他の人たちは「労働力売りまーす」と声をかけていましたから).これは直接人間が入って行うロールプレイングゲームの特徴かもしれません.
また,主体5から13までは,最終残高を当初よりも増やすという目標を設定しています.目標を達成できたのは,商店,お弁当屋,そして旅行代理店だけでした.逆に薄荷工場はダントツに赤字になってしまいました.薄荷工場は商店に薄荷キャンディーを卸す訳ですが,なぜか薄荷キャンディーが商店では売れず,在庫が残っていたので薄荷工場からあまり仕入れなかったというのが原因です.原材料や労働力は毎回雇うけれども製品は売れず,結局このような結果になってしましました.
さて,各プレイヤーの感想は次のようになりました.
さて,今回北見市で地域通貨ゲームを行いましたが,改めて認識したことは普段とは役割を担ってゲームを行うことによって,生産,流通,消費という様々な視点から経済を見ることができ,その上で地域通貨の特徴を認識することができるという地域通貨ゲームの効用です.そもそもやっていて楽しいというのもあります.
それと同時に改善すべき課題も見つかりました.第一に,先ほど述べた会社員のケースが示しているように,ゲームデザインの設定に無理があるということです.第二に,国民通貨→地域通貨導入→流通経路の変更という三段階の変化を体感できるような改善が必要です.
これらの課題を解決する上で,ゲームの設定それ自体をもっとシンプルにしていく必要があるように思います.限られた時間でよりたくさんの取引をしていった方がよいように思います.その上でもゲームデザインを改良していく必要があります.